コシナ 20mmF3.8の性能/描写/作品


(特徴と性能)


 コシナが2000年頃まで発売していた焦点距離が20mmの広角レンズです。個人的にはこのレンズの落ち着いた描写が大好きでした。しかし、シャープでコントラストの強い写りを追求する当時の風潮にあわなかったためか、あまり話題にならないまま市場から姿を消してしまいました。
 8群9枚の大がかりな構成で、最大径が65mmもあり、少し目立ついでたちです。しかし、重さはなんと184gしかありません。解放F値は3.8と少し暗めですが、最短撮影距離は20cmまで寄ることができます。
 当時の定価は4万円でしたが、実際には長い間新品が1万円程度で売られていました。10年程前、広角練習用のレンズを探していたときに、カメラ年鑑でこのレンズを見つけました。たまたま訪れた新宿西口の小さなカメラ屋さんでこのレンズの新品にばったりと出会ったときの興奮を、今でも懐かしく思い出します。



重量 184g
大きさ 65mmx35.5mm
レンズ

8群9枚構成  1:3.8

絞り 最小絞りF22 5枚羽根
焦点距離

撮影距離:0.20m-∞

メーカー コシナ
フィルター径 62mm
発売価格 40,000円


 このレンズが映し出すレトロな世界は、「高解像度、高コントラスト、低歪曲」を追求するデジカメ全盛の現代にはとても個性的で魅力的です。レトロな世界といっても、トイカメのような積極的な乱れはありません。あくまで一眼レフというきっちりとした枠組みの中で、フラットで渋みのある写りを楽しむことができます。
 絞りを開いた時のふわふわとした写りも魅力的ですが、F22まで絞ったときの乾いた描写にも、捨てがたいものがあります(自分は密かに「低コントラスト・スコパー」と呼んでいました)。高コントラストのキリリとした写真に魅力を感じる人にとっては、眠たい写りに見えるかもしれません。また、他の人に見せたときに、あっと驚いてもらえるようなシャープさもありません。しかし、仕事に疲れた深夜に懐かしく眺め返すような、心に残る写真を残したいときに、このレンズはまさに適役です。
 仕様では焦点距離が20mmとなっていますが、実際にはもう少し広い範囲が写るようです。また、直線の歪曲も適度に見られるので、他にはない絵作りを楽しめます。さらに、ゴーストやフレアが出やすいので、それらを積極的に作り出して作図に生かすこともできます。
 レンズ技術の進歩のためか、最近のレンズは何となく均一化されてきているように思えてなりません。画像を拡大して解像度やにじみを確認するだけの、疲労感に満ちたレビューが溢れる中で、このような落ち着いたレンズは自分にとって心和む存在です。このレンズを軽量一眼レフにセットしてお気に入りのモノクロフィルムを入れておけば、どんなに多忙でも自分を見失わずに頑張れるような気がします。

Cosina20mmF3.8

 コシナは日本が世界に誇る光学機器メーカーで、自社ブランドの生産のみならず、海外を含む数多くの有名メーカーに優れた製品を提供してきたことで有名です。提供先の詳細は当時も今も明らかにされていませんが、同じレンズにブランド名がついただけで価格が跳ね上がっていたことを考えると、当時これほどお買い得のレンズはありませんでした。その頃のコシナには、これ以外にもすばらしいマニュアルレンズが沢山あり、「プアマンズ○○○」などと呼ばれ、親しまれていました。このレンズにもいつか格好の良い愛称が定着すればと、今でも思っています。

 



(コシナ 20mm F3.8の作品・作例)



コシナ 20mm F3.8 作品ギャラリー1 2010.2.12
  


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