モノクロフィルムの自家現像ー薬品を用意する



(はじめに)


 現像には、現像液、停止液、定着液、及び、水滴防止液という溶液を用意します。どれもカメラ屋さんで購入することができます。下の写真の4つの薬品をそろえるだけですから、簡単です。ここでは、これから始める人のために、それぞれの準備の仕方について、簡単に紹介します。
 また、フィルム現像用品はこれから次第に入手し難くなることも予想されます。そこで、フィルム現像をこれから数年間楽しむために買い置きしておくべき分量やコストについても、自分のためのメモとして、ここに書き残しておこうと思います。



1.現像液


 カメラ屋さんでは、様々な現像液が市販されています。最初はどれにしたらよいか、戸惑うと思います。ここでは、比較的、手に入り易いものを紹介します。
 最も標準的な現像液として、コダックのD-76という商品があります。これは、現像液の代表選手のような存在です。比較的入手しやすく、コストも3.8リットル用で約600円程度と安価です。
 また、これよりも現像時間が早い迅速現像液とよばれる現像液もあります。T-MAXデベロッパーや富士フィルムのスーパープロドール(下の写真の右端)等です。これらは、現像時間が短く、増感しても粒状性が悪化しません。これらの迅速現像液はほとんどのフィルムに使用可能ですが、それぞれ、コダックのT-MAXシリーズのフィルムと富士フィルムのプレストのシリーズに使ったときに、より良い結果が得られるように作られています。
 さらに、感度は低いが粒状性は高い超微粒子現像液も人気があります。コダックのマイクロドール-Xや富士フィルムのミクロファインなどです。これらの現像液は、撮影のときに露出値を多くしておくと、シャープな結果を得ることができます。
 実際の現像液の作り方は、製品によって異なりますので、製品の説明書をよく読んで作ります。たとえば、富士のスーパープロドールの場合、1リットル以上入るペットボトルと、1リットルの温水(20度から40度)を用意します。そして、1リットル用の薬品を、温水をかくはんしながら徐々に投入し、完全に溶かせば出来上がりです。
 コストは製品によって異なります。たとえば、コダックのD-76の場合、1リットルあたり36枚撮りフィルムを4本程度、24枚撮りを6本程度現像できるとされています。アマチュアですから、少し節約をして、1回の現像に300mlを使い、同じ現像液を3回使ってから捨てる(1回毎に現像時間を1割程度増やして使う)としましょう。この場合、1リットルあたり10本以上は現像できます。ということは、3.8リットル用で24枚撮りが40本くらい現像できることになります。週に1本程度撮影する人がこれから5年間楽しむためには、3.8リットル用が7袋は必要ということになります。
 単価については、D-76が3.8リットルが600円として1本あたり17円程度、T-MAXデベロッパーが3.8リットルが1200円として1本あたり32円程度、マイクロドール-Xは3.8リットルが1000円として1本あたり27円程度です。

現像で使う4つの薬品

右から、現像液(スーパープロドール)、停止液
(酢酸)、定着液(スーパーフジフィックス)、
水滴防止剤(ドライウェル)         




2.停止液


 現像液の能力は酸性になると弱くなります。これを利用して、現像が終わったら酸性の溶液を入れて現像を停止させることができます。通常は、酢酸を薄めたものを使います。停止液用にさまざまな濃度の酢酸が市販されています。これらを薄めて1.5%から3%の水溶液を作ります。富士の製品の場合(上の写真の右から2番目)、50%の酢酸なので、水1リットルに酢酸を30g加えます。
 50%の酢酸1リットルから33リットルの水溶液ができますから、フィルム1本あたり250mmlを使うとして、13本くらいは停止できます。週に1本程度撮影する人がこれから5年間楽しむためには、2リットルで足りる計算です。フィルム一本あたりの単価は、50%の酢酸1リットルが600円くらいとして、5円以下です。
 酢酸はにおいが強いので、クエン酸で代用することもできます。それらが無いときは、流水で水洗しても問題なく停止できます。



3.定着液


 現像により感光部分を銀に還元した後に、定着液により感光剤を取り除いて、フィルムを長期保存が可能な状態にします。富士フィルムのスーパーフジフィックスが入手しやすく、使いやすいでしょう(上の写真の右から3番目)。作り方はとても簡単です。たとえば、スーパーフジフィックスの場合は、水と1:2の割合で混ぜて3リットルの溶液を作るだけです。1リットルで24枚撮りフィルムが60本以上定着できるので、週に1本程度撮影しながら5年間楽しむためには、5リットルあれば良いでしょう。価格は1リットルで700円くらいです。24枚撮り1本あたりのコストは4円以下になります。



4. 水滴防止液


 定着の後は、水洗を行います。その際に水洗促進剤を使っても良いのですが、省略することもできます。しかし、その後,乾燥するときには、水滴のあとがつかないように、水滴防止剤を使った方がよいでしょう。店頭では、富士のドライウェルをよく見かけます(上の写真の左端)。コストは、200ml入りのボトルが240円くらいで、200倍に薄めると40リットルになります。24枚撮りフィルムに250ml程度使うとして160本分になりますから、週に1本程度撮影しながら5年間楽しむためには、2本(400ml)あれば良いでしょう。コストは、1本あたり2円以下です。

 以上を合計すると、最も節約した場合,フィルム1本あたり28円程度になります。週に24枚撮りを1本撮影する場合、100フィート缶からワンタッチパトローネに詰めた時のフィルム代(約130円)と合わせても,1週間あたり160円以下です。以上のことから、1週間に1本のペースで24枚撮りフィルムを撮影・現像するときの1年間あたりのコストは、薬品を節約しながら使った場合で8000円程度、薬品をかなり贅沢に使ったとしても10,000円程度です。週に2本撮るときは、この倍です。計算してみて、思ったほどコストがかからないことに、自分でも驚いています。
 なお、用具のところでも書きましたが、薬品はすべて劇薬で中毒等の危険がありますから、本人や家族の方が薬品などを誤って口に入れたり触ったりしないように、全ての薬品や用具は家族や子供などの手の届かない所に厳重に保管しなければなりません。
 また、薬品の中には、洗剤などと混ざると危険なガスを発生するものもあるので注意が必要です。
 さらに、使用後は、法律の定める産業廃棄物業者に連絡して引き取ってもらう必要がありますので、廃液は、種類ごとにポリタンクなどにまとめておき、専門の業者に廃棄を依頼します。


広告

  • recruit
  • our services
pagetop